論文の要旨
日本において教会増殖の指導者の特徴
日本は150年に及ぶプロテスタント宣教を経て、今なお福音が十分に受け入れられていない民族として世界で2番目に人口の多い民族である。日本では教会の成長が下落傾向にある中、いくつもの教会が現代日本という文化的文脈において新しい教会を生み出してきている。教会を生み出しているそれらの教会は日本各地にあり、教会の規模も異なり、様々な教団教派に属し、伝統的な教会のモデル、セル教会のモデル、ハウスチャーチのモデルといった、働きのスタイルも多様である。
本プロジェクトは、日本で教会を生み出している日本人指導者の基本的な特徴を発見し、示すための調査研究である。これは帰納的な研究として、地域教会についての神学的かつ聖書的な視点、教会の指導者についての記述、また従順、権威、奉仕、権限委譲を含むリーダーシップスタイルについての考察を示したものである。GLOBEスタディ、リーダーシップ理論、日本的リーダーシップと日本の教会についての研究、教会成長、教会増殖、教会開拓運動を含む、教会増殖に関する現代の文献についても研究した。
実地調査では、過去20年間に少なくとも3つの教会を生み出したことのある60以上の教会を対象とした調査を行った。それらの教会の基本的な情報を得るためのアンケート調査を行った。アンケートに応じた13の教会から、掘り下げた準構造的面接を行うために6教会を選んだ。それらの6教会から合計で62の教会が生み出されている。性格、賜物、リーダー養成、神学的視点、役割、スタイル、優先順位、行動様式、教会増殖の実践について、6人の主要な指導者と8人の二次的リーダーに面接した。
面接の内容を文字起こしした原稿や記録をもとに、要約メモとデータ分析ソフトウェアを用いた定性データ分析を行った。分析の結果、教会を生み出している指導者に関する、主要な6つの特徴が発見された。それらは、「働きに関するビジョンを神から受け取る」、「危険を冒すほどの信仰を働かせる」、「教会を動的な派遣型の共同体と見なす」、「働きのために信徒を養成する」、「励ますことを通して人々との関係を用いて指導する」、「実践的な働きを通して積極的に実行する」、である。
本プロジェクトは、日本の教会に対する示唆、個人的に学んだこと、研究の過程について、将来の個人的な働きに関する考察を含む。また、研究手法に関することや将来に向けての提案からなる17の付録も付随している。